2024年から始まった新NISAや継続的に人気のiDeCoについて、その税制優遇の仕組みと効果的な活用方法をまとめました。これらの制度を正しく理解し組み合わせることで、節税しながら効率的に資産形成を進めることができます。特に「iDeCoファースト」の考え方を軸に、無理なく継続できる投資戦略を構築することが成功の鍵となります。
iDeCoが提供する強力な税制優遇
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後の資金形成を目的とした私的年金制度で、非常に強力な税制優遇措置を備えています。その名の通り「確定拠出」型であり、自分で拠出した金額とその運用成果によって将来受け取る年金額が決まります。
三段階の税制優遇メリット
iDeCoの最大の魅力は「拠出時」「運用時」「受取時」の三段階で税制優遇が受けられる点にあります。まず拠出時には、拠出した金額の全額が所得控除の対象となります。これにより所得税と住民税が軽減され、手取り収入が増加するという即効性のあるメリットが得られます。
運用時においては、運用で得た利益(配当金や売却益など)にかかる約20%の税金が非課税となります。通常の投資では利益が出るたびに税金がかかりますが、iDeCoではその分を再投資に回せるため、複利効果がより強く働くことになります。
さらに受取時にも、一時金として受け取る場合は退職所得控除、年金として受け取る場合は公的年金等控除が適用されます。これにより最終的な税負担も軽減されるのです。
「60歳まで引き出せない」は本当にデメリットか
iDeCoのデメリットとしてよく挙げられるのが「60歳まで資金を引き出せない」という点です。しかし、ファイナンシャルプランナーの山崎俊輔さんは、これを必ずしもデメリットと考える必要はないと指摘しています。
現代社会では65歳まで働くことが一般的となっており、老後のために確実に資産を残せるという点ではむしろメリットとも言えます。また、60歳を超えてからも子どもの教育費や住宅ローンの支払いが続く家庭もあり、その時期に使える資金として活用できる可能性もあります。

新NISAの特徴と拡大された税制優遇措置
2024年1月からスタートした「新NISA」は、従来のNISAを拡充した制度です。基本的な税制優遇の仕組みは同じですが、より使いやすく、長期的な資産形成に適した制度へと進化しました。
大幅に拡充された投資枠と非課税期間
新NISAの最大の特徴は、非課税保有期間が無期限になったことです。従来のNISAでは保有期間に制限がありましたが、新NISAではその制限がなくなり、長期投資がより有利になりました。
また、非課税保有限度額も1800万円に拡大され、年間投資枠も「つみたて投資枠」で120万円、「成長投資枠」で240万円と大幅に増加しました。これにより、より多くの資金を非課税で運用できるようになっています。
新NISAの本質は税制優遇の拡大
新NISAについて理解すべき重要なポイントは、この制度が本来「税制優遇措置の拡大」であるという点です。NISAは投資商品や運用手法そのものではなく、運用益に対する税金を非課税にする制度です。
通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座での運用ではこの税金が課されません。これにより、長期的には大きな差が生まれます。ただし、利益が出なければ税制優遇のメリットも発生しないため、適切な投資判断が重要となります。
iDeCoと新NISAの効果的な併用戦略
iDeCoと新NISAはどちらも優れた税制優遇制度ですが、特性が異なります。これらを効果的に併用することで、より効率的な資産形成が可能になります。
“iDeCoファースト”アプローチの理由
山崎俊輔さんは「iDeCoファースト」、つまりiDeCoへの投資を優先するアプローチを提唱しています。その主な理由は二つあります。
まず、税制優遇のメリットの大きさです。iDeCoとNISAはどちらも運用益が非課税になるという点では同じですが、iDeCoはさらに拠出金額の全額が所得税や住民税から控除されるという大きな優遇があります。より節税効果が高いiDeCoを優先することは、資産形成において基本的な選択と言えるでしょう。
次に、活用しやすい金額設定が挙げられます。会社員や公務員のiDeCo拠出金額の上限は月々1万2000円~2万3000円と少額であり、この枠を使い切ることは比較的容易です。一方、新NISAの「つみたて投資枠」は年間120万円(月10万円)と大きく、全額を活用するのは一般的な会社員にとってはハードルが高いと言えます。
新NISAの活用法:「枠を使い切る」より「無理なく継続する」
iDeCoの枠を優先的に活用した後、新NISAはどのように活用すべきでしょうか。山崎さんは、新NISAの枠をフル活用することよりも、無理のない範囲で継続して投資することの重要性を強調しています。
「新NISAの非課税保有限度額や年間投資枠をフル活用するのは難しい」ということを認識したうえで、自分にとって無理のない投資金額を見極めることが大切です。月10万円が難しければ、月1万円からスタートして様子を見るという方法も有効です。
新NISAは非課税保有期間が無期限になったため、「年間投資枠を使い切れないともったいない」という考え方からも解放されました。個々のペースで柔軟な投資ができる点が、新NISAの大きなメリットです。

効果的な投資戦略と資産管理の実践
iDeCoと新NISAを活用する際の具体的な投資戦略と資産管理について、実践的なアドバイスをご紹介します。
投資信託による積立・長期投資が基本
iDeCoと新NISAどちらにおいても、投資信託を活用した積立・長期投資が基本となります。特に近年は投資信託の低コスト化が進んでおり、分散投資の効果が期待できる商品が増えています。
投資信託の選択においては、リスク許容度に応じて「株式型」や「バランス型」を選ぶことができます。株式型は比較的リスクが高い代わりにリターンも期待できる一方、バランス型は株式以外の資産にも分散投資するため、リスクを抑えた運用が可能です。
重要なのは、短期的な値動きに一喜一憂せず、長期的な視点で運用を続けることです。投資は短期的には上下しますが、長期間続けることで、平均的にはリターンを得られる可能性が高まります。
資産全体のポートフォリオを意識する
効果的な資産形成のためには、iDeCoや新NISAだけでなく、預貯金も含めた資産全体のポートフォリオ(資産配分)を意識することが重要です。
山崎さんは、資産全体の何割を投資に、何割を預貯金として持つか、最初に考えることを勧めています。例えば資産の半分を預貯金、半分を投資に配分すれば、投資で10%の損失が出たとしても、資産全体では5%の減少にとどまります。このように、全体のリスクをコントロールしながら資産形成を進めることが大切です。
資産管理ツールの活用で全体像を把握
複数の口座(NISA、iDeCo、銀行口座など)で資産を管理していると、全体像が見えにくくなる問題があります。資産管理ソフトやアプリを活用して一元管理することで、ポートフォリオの変化を把握しやすくなります。
例えば家計簿アプリや野村證券の資産管理アプリ「OneStock」などを利用すれば、想定していた資産配分からの乖離に気づきやすくなります。必要に応じて投資額の調整や資産配分の見直しを行うことで、リスク管理を徹底することができます。
まとめ:無理なく続ける資産形成が成功の鍵
iDeCoと新NISAを活用した資産形成の秘訣をまとめると、以下のポイントが重要です。
まず「iDeCoファースト」の考え方に基づき、税制優遇のメリットが大きいiDeCoを優先的に活用しましょう。iDeCoの拠出限度額(月々1万2000円~2万3000円)を使い切ることを最初の目標とし、その後余裕がある範囲で新NISAを活用するというアプローチが効果的です。
新NISAについては、枠をフル活用することにこだわらず、自分の経済状況に合った無理のない金額で継続的に投資することが重要です。長期的な視点を持ち、投資信託などを活用した分散投資を心がけましょう。
資産形成は一朝一夕に成果が出るものではありません。「iDeCoはフル活用、新NISAは無理のない範囲で継続する」という基本方針を守りながら、長期的に取り組むことが成功への近道となります。税制優遇を賢く活用し、無理なく続けられる資産形成計画を立てることで、将来のための資産を着実に築いていきましょう。