50代は定年退職が視界に入り始め、老後の生活についてより現実的に考える時期です。
しかし、多くの方が「もう遅いのでは?」と資産形成を躊躇してしまいます。
実際には、50代からでも計画的に取り組めば、十分に老後資金を築くことができます。
本記事では、50代からの資産形成がなぜ重要なのか、どのような方法が適しているのか、そして避けるべき投資手法について、専門家の見解をもとに詳しく解説します。
50代から資産形成を始めるべき明確な理由
老後までの準備期間は十分にある
50代から老後までは約15〜20年の期間があり、資産形成に取り組むには十分な時間が残されています。日本の年金受給開始年齢が65歳であることを考えると、50代前半からスタートすれば10年以上の運用期間が確保できます。
さらに、近年では65歳以降も働く高齢者が増加しており、「令和4年版 高齢社会白書」によれば、65〜69歳の年代では労働力人口比率が51.7%、70〜74歳でも33.2%に達しています。
70歳まで働くと仮定すれば、50歳から約20年の期間があり、コツコツと資産形成を進めることで、老後資金を着実に準備できます。

子育て負担の減少で投資余力が増加
50代は多くの家庭で子どもが独立し始める時期であり、それまで子育てにかけていた費用が軽減される傾向にあります。教育費や養育費などの大きな支出が減少することで、その分を資産形成に回すことが可能になります。
これまで家計を圧迫していた費用が解放されることで、より積極的な資産形成が実現できるのです。
老後生活に対する実感と危機感
若い頃は老後の生活について実感が湧きにくいものですが、50代になると退職後の生活が具体的にイメージできるようになります。この時期には「ねんきん定期便」で将来の年金見込み額も確認できるため、年金だけでは不足する部分を自分で補う必要性を認識しやすくなります。
老後の生活に対する具体的なイメージを持つことで、資産形成への取り組みもより真剣なものになるでしょう。
50代からの堅実な資産形成の基本戦略
適切な貯蓄割合の設定
50代の資産形成では、手取り収入に対してどれくらいの割合を貯蓄・投資に回すべきかが重要な問題です。金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(令和5年・二人以上世帯調査)」によると、50代の貯蓄割合で最も多いのは「10〜15%未満」(20.2%)、次いで「5〜10%未満」(15.7%)となっています。
しかし注目すべき点として、「貯蓄しなかった」と回答した世帯も28.1%存在しています。 これは、まだ子どもが独立していない家庭や、住宅ローンなど固定支出が大きい世帯も含まれていると考えられます。
自分の状況に合わせて、無理のない範囲で貯蓄割合を設定することが大切です。
リスクを抑えた投資アプローチ
50代からの資産形成では、リスクを抑えた安定的な投資戦略が基本となります。これは、若い世代と比べて資産回復のための期間が限られているためです。高いリターンを求めて高リスクの投資に手を出すのではなく、比較的リスクが低い投資方法を選び、税制優遇制度も活用しながら、着実に資産を増やしていく戦略が適しています。

避けるべき投資商品とその理由
FX(為替証拠金取引)の危険性
資産形成のツールとして避けるべき金融商品の筆頭として、FX(為替証拠金取引)が挙げられます。FXは広告も多く、為替相場の動きがニュースでも取り上げられるため身近に感じられますが、資産形成のツールとしては不適切です。
その理由は、FXが「投資」ではなく「投機」だからです。
FXのような為替取引は、誰かが円を売って米ドルを買う際に、反対に米ドルを売って円を買う誰かがいなければ成立しません。これは「ゼロサム(合計がゼロ)」ゲームと呼ばれるもので、誰かが得をすれば誰かが同じだけ損をする構造になっています。
50代からの株式投資に対する専門家の見解
投資の中でも株式投資は一般的に「プラスサム」と言われ、経済成長に伴って全体的な価値が上昇することが期待できます。しかし、投資のプロによれば、50代からの資産形成のための主要な手段としては推奨されていません。
その理由として考えられるのは、株式市場の短期的な変動リスクです。
50代からの投資期間は若い世代と比べて限られており、市場の大幅な下落から回復するための十分な時間がない可能性があります。
50代におすすめの具体的資産形成方法
分散投資による安定性の確保
50代からの資産形成では、一つの投資商品に集中するのではなく、複数の資産クラスに分散投資することが推奨されます。預金、債券、投資信託など、リスクレベルの異なる商品に資金を振り分けることで、全体のリスクを抑えながら、一定のリターンを期待できます。
特に、積立投信や債券など、比較的安定的なリターンが期待できる金融商品を中心に据えることが、50代からの資産形成には適しています。
これらは、短期的な市場変動の影響を受けにくく、長期的には着実な資産増加が期待できます。
税制優遇制度の積極的活用
50代からの資産形成では、限られた時間で効率よく資産を増やすために、税制優遇制度を活用することが重要です。特に、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)などの税制優遇制度は、50代からの資産形成に大きなメリットをもたらします。
これらの制度を利用することで、通常の投資よりも税負担を軽減しながら資産形成ができるため、同じ投資額でもより効率的に資産を増やすことが可能になります。
老後に向けた具体的な資金計画

必要資金の現実的な算出
老後の資金計画を立てる際には、年金受給額を正確に把握することが出発点となります。50代になると「ねんきん定期便」で将来の年金見込み額が表示されるため、受け取れる年金額を確認できます。
その上で、理想の老後生活に必要な月々の支出を算出し、年金との差額を自己資金でどう補うかを計画します。
老後の生活費は現役時代よりも低下する傾向がありますが、医療費や介護費用が増加する可能性も考慮に入れる必要があります。
退職金の効果的な活用
多くの企業では定年時に退職金が支給されます。この退職金を効果的に活用することも、老後の資産形成において重要な要素です。一時金として受け取る場合は、すべてを消費せずに、一部を安全性の高い金融商品で運用することを検討すべきでしょう。
退職金の運用方法としては、分散投資の原則に基づき、預金、国債、投資信託などに分散して配分することが推奨されます。
結論:今からでも間に合う堅実な資産形成
50代から始める資産形成は決して遅すぎるわけではありません。
むしろ、子育てが一段落し、老後に対する具体的なイメージを持てるこの時期だからこそ、より現実的で効果的な資産形成が可能になります。
重要なのは、無理のない範囲で継続的に取り組むことです。 手取り収入の一定割合を定期的に貯蓄・投資に回し、リスクを過度に取らない堅実な投資方法を選択することで、定年後に後悔しない資産を形成することができます。
また、税制優遇制度を積極的に活用し、退職金の効果的な運用計画を立てることも、50代からの資産形成を成功させるための重要な要素となります。
今日から計画を立て、行動に移すことで、充実した老後生活への第一歩を踏み出しましょう。
